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ひゅう。と冷たい風が、私の頬を撫でつけた。
壁に激突した車は、素人目から見ても、もう動かないだろうと判断出来た。
何しろタイヤが無くなっているし、潰れたボンネットから煙が出てる。
「観念しなよ。」
小さく呟いた女性警官が、その手に持つ拳銃を私に向ける。
「う。」
女性警官から逃げようと後ずさりした私は、
今にも火災を起こしそうな車に行く手を阻まれる。
やだ!どうしよう!!
辺りを見渡すも、どこにも逃げ場が見当たらない!
女性警官が構える腕に、力が込められた。
「い、いや…!!」
逃げなきゃ!と、心が焦るも、身体に力が入らない。
ダラダラと汗が額から落ちるだけ。
「じゃあな。」
女性警官がニヤリと口角を釣り上げた刹那
『パァン。』
乾いた発砲音が夜空に弾け、静寂の闇に溶け消えた。
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