1 いとしのエリー

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平成最後の2月。昼間はそれなりの気温となっていたけれども、絵里が起きる夕方には既に肌寒く、布団から這い出すのには気合いが必要だった。 「んりゃぁ!!」と掛け声一閃、布団と決別した絵里は朝風呂……いや、夕方風呂に入り身支度を整える。 そして夜になるとイソイソとお出かけだ。行く場所は1年前に付き合い出した彼氏の元。 コンビニで大量のお菓子、具体的に言えばカゴ3個分のお菓子を買っている時に「凄い量ですね。」と声を掛けられたのが彼と付き合う切っ掛けとなった。 後に絵里は彼に「なんであの時、あのタイミングで声を掛けてきたの?」と聞いた事がある。ナンパするシチュエーションとしては余りにも色気が無かったからなのだけれど、彼からの答えは絵里の想像とは違っていた。 「だって、あんなに大量のお菓子を購入してる女性、珍しいでしょ?カゴ3個分だよ?きっと会社の買い物を一人でやらされてるんだろうな、可哀想にって思ったんだ。しかもカゴ2つを両手に持って、1個を蹴飛ばしながら売り場をウロウロしてたじゃない。周囲からクスクス笑われていたから可哀想で。」 可哀想って言われた!しかも2回も!!ってか、笑われてた! 色気云々より前に、可哀想だから声を掛けられたと言うその事実に、絵里は激しく落ち込んだものである。
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