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「ううん、それはもういいんだ。ひめくりと出逢えたこと、すっごく良いご縁だった。だから、ありがとう」
心からそうしのぶが云うと、ひめくりは頬を染めて恥ずかしそうにした。
「ひめも、しのぶさんと素敵なご縁を結んでいただいて、とっても幸せです」
祖父の言葉が、しのぶの記憶から蘇る。しのぶにたくさんの良いご縁がありますように。なあ、しのぶ。世の中には驚くほどいろんな人がいて、それぞれいろんな考え方を持っているんだよ。だからしのぶには、たくさんの人と出会って、さまざまな生き方を、学んでほしい。どんな風に生きていても大丈夫なんだって、知ってほしい。そうしたらきっと、一人ぼっちには、ならないから。たくさんたくさん、良いご縁を結んでほしい。
すっかり忘れてしまっていた。あんなに熱心に、しのぶ本人よりも熱心に、願ってくれたのに。
おじいちゃん、ごめん。と、しのぶは心のなかで謝る。それから、祖父がしていたように、缶いっぱいに五円玉を集めようと、思った。
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*第二話おしまい。次のお話に続きます*
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