第一話

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 離れた処で無添加のジャムを買っていた梨花が、「何か良いものでもあったの、」と、明日美の横に来た。 「見て、これ。可愛いでしょう」  明日美は熊を彼女の鼻先にぶら下げた。 「本当だ、可愛い。でも、手作りかあ……」  梨花は熊のお腹を指でとんと押した。 「手作りだと、何か駄目なの、」 「別に駄目じゃないけど、ちょっと安っぽいじゃない」  明日美は熊を元の位置に戻した。ベレー帽の女性は子どもの客に気を取られて、明日美たちの会話は聞こえなかったようだった。  梨花は背伸びをして、 「あ、やっぱりあのベーカリーのブース、行列が出来てる。私、並んでくるね。明日美は?」  目当ての店を見つけたようだ。明日美は頭を振った。 「私はいい」 「じゃあ、後でね」  駆け足で梨花は行ってしまう。相変わらず自分勝手だなと、梨花は溜息を吐き、一人で青空市を見て回った。
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