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離れた処で無添加のジャムを買っていた梨花が、「何か良いものでもあったの、」と、明日美の横に来た。
「見て、これ。可愛いでしょう」
明日美は熊を彼女の鼻先にぶら下げた。
「本当だ、可愛い。でも、手作りかあ……」
梨花は熊のお腹を指でとんと押した。
「手作りだと、何か駄目なの、」
「別に駄目じゃないけど、ちょっと安っぽいじゃない」
明日美は熊を元の位置に戻した。ベレー帽の女性は子どもの客に気を取られて、明日美たちの会話は聞こえなかったようだった。
梨花は背伸びをして、
「あ、やっぱりあのベーカリーのブース、行列が出来てる。私、並んでくるね。明日美は?」
目当ての店を見つけたようだ。明日美は頭を振った。
「私はいい」
「じゃあ、後でね」
駆け足で梨花は行ってしまう。相変わらず自分勝手だなと、梨花は溜息を吐き、一人で青空市を見て回った。
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