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ひめくりはひらひらとした袖口で、自分の口を隠すようにした。「で、でも……、」顎を引き、ためらう。
「ひめくりは私の役に立ちたいんでしょ? だったら早くそのシダに云って。今すぐ私の為に、花を咲かせてって」
ふるふると、ひめくりは首を横に振る。
「出来ません……、ひめにはそれは出来ません」
「どうして? ひめくりの出来ることのうちの一つじゃない。出来るんだから、やってよ。出来ることなら頑張るって、云ってたじゃない。ねえ、ひめくり。お願いだから、私の願いを叶えて」
「出来ません……!」
ひめくりは叫び、大きな睛から大粒の涙をこぼした。
「出来ないことを無理にさせようとすることは、ひめには出来ません。そんな風に無理やりねじ曲げるみたいなことは、ひめには出来ません。それはきっと、シダのしのぶさんにとって、とても辛いこと……だから。だからごめんなさい、しのぶさん。しのぶさんの願いごとを叶えられなくて、ごめんなさい……」
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