56人が本棚に入れています
本棚に追加
「見た? ひめくり、今の……、」
現実の出来事だったのだろうかと、しのぶはひめくりに確認する。ひめくりは胸に両手を重ねて、頷いた。
「はい。とっても綺麗なお花でした」
* * *
翌朝、シダのしのぶは完全に枯れ果ててしまっていた。昨日まで青々と葉をつけていたのが信じられないくらい、哀れな姿だった。
ひめくりは涙目で、しのぶに訊ねた。「シダのしのぶさんはどうしてしまったのでしょう」
しのぶは唇を噛みしめ、答えた。
「自然に反したから……かな」
自分の自然を、ねじ曲げたから。
うなだれるひめくりの背中に手を当てて謝る。
「ごめんね、ひめくり。私の所為だね」
最初のコメントを投稿しよう!