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あんな無理なことを、云ったからだ。シダのしのぶにも、ひめくりにも、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
ひめくりは首を振って、
「シダのしのぶさんは、ひめよりずっとずっと、しのぶさんのお役に立ちたかったんだと思います。ここにいることが、とっても幸せだって、歌っていましたから」
ずず、と、洟を啜る。
「ここにいることが幸せで、お日様の光を浴びることが幸せで、お水を飲むことが幸せで、シダのしのぶとして生きていることが何よりの幸せだって、歌ってました。いつも」
「そう……だったんだ」
シダのしのぶの歌は、恋の相手を見つける為じゃない。シダとして生きる幸せと歓びを、ただ素直に誇っていた。さびしい歌じゃなかった。全然。
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