第二話

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 自分も自分のことを、全て全て受け入れて、生きることが出来るだろうか。しのぶは思った。自分も自分をねじ曲げることなく、自分の自然に正直に、生きたい。しのぶとして幸福を感じて、生きていきたい。例えみんなとは違っていたとしても。もしかしたらいつかみんなのように恋をすることになっても。  シダはシダとして完成されていて、美しい。私も私として完成されているのかもしれない。花とは違う美しさを、持っているのかもしれない。何も欠落なんて、無いのだろう。ただ自分の自然が在るだけ。自分の自然に従って生きれば良いだけ。私は私の自然を、生きて良い。  しのぶはパジャマ姿のまま、背すじを正した。「ひめくり、どうもありがとう」  きょとんとして、ひめくりはしのぶを見上げる。 「ひめはまだ、しのぶさんのお願いごとを叶えていません」  しのぶは微笑んだ。この子は本当に、神様なのかもしれない。だってこんなにも、私の心を楽にしてくれた。私の願いは、外れた線路を戻すことじゃなかった。みんなとは違っても、自分の線路で大丈夫なのだと、思えるようになることだったのだ。
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