幸運なモノ

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ゆっくりと意識が覚醒していく。 数度瞬きを繰り返し重たい瞼を開ければ、そこには馴染みのない天井が見えた。 回らない頭でその天井を眺めていたが、やがて眠る前の記憶が朧げに蘇る。 そう。確かここは、柏木さんの部屋だ。 肝心の主は今ここにはいないようで、静まり返った空間を虎介は気怠げな動作で見渡す。 部屋の中はすっかり暗くなっていて、窓の外を見れば星空が見えた。 自分はどれくらい眠ってしまっていたのだろう。 というか柏木さんは何故、こんなことを……。 「あ、起きてるじゃん」 「!」 夜空を眺めていた虎介は、咄嗟に声のした方を向く。 まだ意識がはっきりしていないのか、ドアが開いたのに気付かなかった。 部屋に入ってきた柏木さんは、よっこらせと床にあぐらをかき、僕を見て笑う。 八重歯の見える無邪気な笑みに、僕は顔を硬ばらせる。 本当に、考えの読めない人だ。 「さっきさ、タツさんから電話がきたんだ」 「……タツさんって、あの、この前の……」 「そそ。きっとあの人なんか勘付いたな」 そう言って楽しそうに体をユラユラさせる柏木さん。 彼は何が狙いなのだろう。というか、勘付いたって?
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