高校デビュー

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羽純くんの声に、強張った体が反応する。 どうしよう、誤魔化すか?彼は僕の素顔を知らないわけで……、いやでもここにいる時点で言い訳できないよな。それに声だって知られてるし、色々無理が……。 おそらく下手な抵抗は、状況を悪化させかねない。 虎介は無意味な思考を打ち消して、羽純に背を向けたまま体の向きを変えた。 「ほ、保健室、行ってきます……」 「え?あ。お、俺、付いてこっか……っ?」 「いえ、一人で……」 呼ばれた名前を否定せず、言われた通り保健室に向かう。 そのことで僕が虎介だと確信したであろう羽純くんは、再度目を見開いて驚愕していた。 どう思っただろう。変な噂が流れなきゃいいな。でも羽純くんは優しいし、そんなことしないか。顔を見られたことに変わりはないけど……。 辛い思いをしてまで隠してきた素顔をこうもあっさり目撃されてしまったショックは大きかった。 今更になってポケットからマスクを取り出し装着する。 彼に見られたことで何かが変わってしまうのだろうか。それとも大して影響はないのだろうか。 後ろからの視線に逃げるように、保健室に向かう足取りが早くなる。 心臓の音は、未だ騒がしく鳴り続けていた。
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