不幸な美少年

2/3
前へ
/306ページ
次へ
顔がいいということは、必ずしも恵まれているということではない。 これは、紛れもない事実である。 天野(あまの)虎介(こすけ)は美少年だ。 色素の薄い髪からのぞく大きな瞳に、小ぶりな鼻と口。透き通るような白い肌は、彼をより一層秀麗な姿にさせる。彼は《虎》という文字が入った名に似合わず、とても中性的な見た目をしていた。 しかしこれほどまでに整った顔を持っていながら、虎介は決して自身が恵まれていると感じることはなかった。 顔立ちのいい者の人生が必ずしも幸せであるかと問われれば、実際そうではない。 虎介は幼少期、赤の他人である男に誘拐される被害に遭った。 幸い誘拐された三日後に男は逮捕。 虎介はその男の家で発見され特に傷を負わされた様子はなかったが、その部屋からは大量の虎介の写真が見つかったという。 さらに小学三年生の時、担任だった男性教師からわいせつな行為を受けたこともある。 教師は自身の膝に虎介を座らせ身体中を撫で回すなどし、怯えた虎介が親にそのことを話して事件が明らかになった。 その教師は退職。事件については学校中に広まり、残りの小学校生活は大分息苦しいものとなった記憶がある。
/306ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2026人が本棚に入れています
本棚に追加