予期せぬ展開

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でもきっと、これはチャンスだ。 高校に入ってから一人も友達ができなかった僕に、向こうから歩み寄ってきてくれている。 いくら顔を見られた相手だからといっても、これを逃す手はないのではないだろうか。 考えに考えた結果、僕はラインを返信した。 〈わかった。行くよ〉 直ぐに既読がついて、猫が歓喜しているスタンプが送られてくる。 それから待ち合わせ場所と時間を決め、やりとりを終えた。 「はい、虎介」 「ん?あ。ありがとう」 いつの間にキッチンに行っていたのか、ソファーに戻ってきた碧兄からマグカップを渡される。 中にはコーヒーが入っていた。彼はブラックだけど、僕のはミルク入りである。 また隣に座った碧兄は一度コーヒーを飲むと、何故か愉快そうに僕を見る。 「何か約束?」 「う、うん。明日友達が遊ぼうって」 「へぇ」 高校に入ってから僕が誰かと遊ぶことがなかったのは碧兄も知っているはずだ。 でも彼は口には出さず穏やかな笑顔を浮かべ、僕の頭を撫でる。 「楽しんでこいな」 兄からの優しい一言に、僕は曖昧に頷くことしかできなかった。
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