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まだ帰ってこないからと、空いている駐車場に車を停めた逹己。
扉から碧兎が出てきたのが分かりシートベルトを外していると、ふと別の人影が視界に入った。
こちらに走ってきているその姿には見覚えがある。
車から降りてよく見れば、相手はやはり自分の知っている人物だった。
「シン」
「え?シンって……」
「碧兎さん!」
呼ばれた碧兎は弾かれたように顔を向ける。
驚いた俺は碧兎同様、走り寄ってくる相手へと視線を向け瞠目した。
シンも俺に気付いたようで「えっ」と声を上げる。急いで来たのか、息が荒く汗も流れていた。
「なんでタツさんがここに!?」
「いや、それはこっちの台詞なんだが……」
「え。2人知り合いなのっ?」
今度は碧兎が驚く番だった。
2人に視線をやり目を瞬かせている。
「あぁ。前話した中学時代の知り合い」
「え、あの一匹狼くんっ?」
「そうそう」
「一匹狼?なんの話ですか?」
流れが分かっていないシンは、汗を拭いながら訝しそうな顔になる。
というか、俺はこの2人が知り合いってことに驚いているんだが。
「シン。お前、どうしてここに?」
「虎介が帰って来てないって連絡があったので。この前会ったでしょ?俺と一緒にいた綺麗な男の子」
「……え」
「なにっ?逹己、虎介と会ったことあるのっ?」
「マジか……。あの子、碧兎の弟だったのか……」
衝撃の事実に固まる中、ふとあることが過ぎる。
あの日からずっと感じていた不安。
そして、彼の今の状況。
これは……もしかすると……。
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