幸運なモノ

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「俺は今、かわいこちゃんを誘拐してるようなもんだろ?シン伝えにか分かんねぇけど、きっとタツさんはそれにもう気付いてる」 そこで彼は立てた親指を自分に向け、ニヤリと笑った。 「で、俺を疑ってる」 まるでそれが狙いとでも言うような態度だ。 疑われて、家に来られて、それでどうするというのだろう。 僕自身、眠ってから特に何かをされた様子はない。 僕を攫った理由って、一体なんだ? 「……何がしたいんですか、柏木さん」 動揺しながらそう静かに尋ねると、彼はその目をスッと細める。 「タツさんが来るなら、絶対シンも来る」 「慎太郎くんも……?」 それって、どういう……。 柏木さんの目的は、慎太郎くんってこと……? 「俺は、あいつの本性が見てぇんだ。いっつも腹ン中で何考えてんの分かんねぇ、そのカッチカチの殻をブッ壊してぇの」 「……ほん、しょう?そんなのどうやって……」 「だから、それを今やってんだろ」 「え?」 その時 ピンポーンとチャイムが鳴る音が聞こえた。 「っ、今のって……、うわっ!?」 外部に気を取られた瞬間、いきなり柏木さんが覆いかぶさってきた。 その手の動きが何をしようとしているのかを察して、一気に青ざめる。
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