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中学生になってからも虎介の災難は終わらず、同学年の女子からストーカー被害を受けたり、後輩の男子から言い寄られ襲われかけたこともあった。
年々増えていくこうした被害に頭を抱えたことは一度や二度ではない。
容姿が整っていることは、決してその人の運勢と直結しているわけではないのだ。
初めは単に絡まれやすい体質だと思っていた虎介も、ここまでくると自分が人に好かれる(あまりいい意味ではなく)顔をしているのだと実感していた。といってもこんな目にあっている故、まったく嬉しくはなかったが。
そこで虎介は、中学を卒業すると同時にある決心をした。
高校は父親の都合で静岡から東京に引っ越すことになっている。
なので環境が変わることを期に、自分を変えようと思ったのだ。
要するに“高校デビュー”というやつだ。
といっても髪を染めるとかそういうものではなく、むしろ地味で目立たない人間になりたい。
自分は変わってみせる。
これ以上顔立ちのせいで人生を振り回されるのは御免だ。友人と別れるのは寂しいが、誰も自分を知らない環境に移れる絶好の機会を逃す手はない。
入学式当日の朝。虎介はそう一人意気込んで、家の扉を開け放ったのだった。
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