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2.チャーリーのお化け
――お兄さん、フォークを落としてみせて
家族の晩御飯、うちのなかはオレンジ色の照明で明るく幸せに頬を染めていました。お母さんが腕をふるった食事は彩と栄養が満点です。
――ああ。いいよ、チャーリー。
お化けを怖がって目と耳を塞ぐようになったチャーリーは、うちの中ではあまり不思議なく普通にしている少年でしたが、時々家族によくわからないことを言いました。
フォークを落としてみせて。それはお兄さんにとって、まるで物理学の講義のように頭の中で意味にまとまらない歪な白球でしたが、お兄さんはチャーリーに従うのです。
食事の風景に折り目がついて、家族はみんな少しずつしわしわになっていきましたけれど、チャリンと床で鳴ったフォークは家族の視線を集めて誇らしそうにハンバーグソースを光らせました。
――どうもありがとう。拾っていいよ。母さんに洗ってもらうといいよ
チャーリーは一人先にフォークから目を反らして、両の手で目を塞ぎながら言いました。
――ああ、いや、こーすれば平気さ
お兄さんはキュっとフォークを自分のシャツでひと撫ですると、笑って言いました。
チャーリーのみているお化けを、誰もみてくれません。
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