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3.チャーリーの閉じた目
――学校で問題がないわけないだろう
――でも、先生も近所の親御さんも、お友達も、誰に訊いても何もないって言うんですよ。チャーリーも学校は楽しかったって言うんです
――楽しいなら行けばいいじゃないか
――学校は楽しいけれど、お化けが怖いって
――やれやれ
チャーリーの閉じた目は、両親が寝室で話す声を聞きました。
やれやれ。チャーリーはお父さんと一緒にため息をつくと、寝間着のズボン裾を滑らせて部屋に戻ります。
窓から月の光が迷いもせず差し込んで、チャーリーの閉じた目をやさしく誘います。でも、チャーリーは怖くて目を開けられません。チャーリーはお化けを怖がって、月に住む誰かを悲しませました。
両の手で目を塞いで、トクトクと脈が時間になって過ぎ去っていきます。チャーリーは学習机の隣に立つと、恐る恐るそっと、手を外しました。そこには姿見がありました。お母さんがちゃんと拭いてくれてある、埃もついていないその鏡には、暗くてぼんやりとしかみえない自分がいました。
チャーリーは安心して、ニッコリ微笑むとしたかったポーズを決めます。僕が一番。ステップだって、作文だって、大食いだって、僕が一番。
チャーリーがもう一度閉じた目には、お化けもいないし誰もいない景色に一人のヒーローがかっこよく閃いていました。
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