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6.生と死、チャーリーとの距離感
お父さんのお爺ちゃんとお婆ちゃんは生きています。
お母さんのお爺ちゃんとお婆ちゃんはチャーリーが産まれてすぐに亡くなりました。
生きている、白髪ながら溌剌としたお爺ちゃんとお婆ちゃんは、チャーリー達家族と一枚の写真に微笑んで、うちのリビングにいます。写真立ては花瓶に埋め込まれていて、いつも幸せな三世代の笑顔の上に花が咲いていました。
亡くなった、これまた白髪ながら溌剌とみえるお爺ちゃんと銀髪のお婆ちゃんはそれぞれ一人ずつの笑顔をお父さんとお母さんの寝室に飾られています。キングサイズのベッドに寝転がると目が合うので、チャーリーは目と耳を塞ぐことに悲しくなると、時々亡くなったお爺ちゃんとお婆ちゃんに会いに行くのでした。
――お爺ちゃんとお婆ちゃんが今年もチーズ作って待ってるってさ
――わーい、大好きよ、二人の作ったチーズ
――伸びが違うんだよ、口元から引っ張るチーズの伸びが
お父さんは誇らしそうに夏休みの里帰りを報せてくれますが、チャーリーは憂鬱でした。
お爺ちゃんが操る耕運機のエンジン音は酷くうるさくお化けの声がかき消され、お婆ちゃんの真っ白な髪の毛はみていると天国を想像してしまってお化けがこちらを覗くのです。
せめてお化けの声は逃げやすく捉えたいし、お婆ちゃんの天国は僕のゆく天国ではないしと、チャーリーは夏の里帰りを悲観するのです。
――おじーちゃん。おばーちゃん。僕は耕運機にお尻を食べられたくありません。僕はおばーちゃんの銀色の髪の方が好きです、銀色は天国より、飛行機の色に似ていると思うから。
お父さんお母さんのベッドに寝っ転がって、チャーリーは天国の二人に目と耳を預けるのです。
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