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8.ナイトキャップは捨てていけ
ギシギシと吊り階段が軋んで、屋根裏部屋に這い上がると、頬を撫でていた先導の風に似たものが、少し上を撫でました。チャーリーの青縞ナイトキャップが飛びます。その時、チャーリーの目下が突き抜けて地球にみえました。自分は今、屋根裏部屋という高い高いところにいるのだと、チャーリーは驚いて目をゴシゴシ擦ります。手の甲には嗅いだことのあるよだれの臭いがして、チャーリーは頭をクシャクシャとやりました。
――撫でろよ
チャーリーは言いました。窓のない屋根裏部屋は殆ど真っ暗で、自分と影の区別も曖昧でしたが、怖くはありませんでした。
――そっちに、行くから
しゃくだな、そんな感じが屋根裏部屋に滞留して、ちょっとした我慢比べが起こりました。チャーリーの頬を、撫でるものの手が消えたのです。チャーリーは思いました。機嫌を損ねた。クラスメイトのシャーリーがそっぽを向くのが思い浮かびます。そんな時、チャーリーは決まって何度も何度も謝ったのでしたが。
――撫でろよ
暗闇に影と共に、目下の地球を透かしみて、凍えそうな足の裏を揉み擦りながら、チャーリーは負けません。
頑固だな。
あなたに似ていますよ。
お前だよ。
そうですか。
屋根裏部屋が囁きます。チャーリーの頬を何かと何かが交互に撫でました。チャーリーは満足気に、呼ばれています。
暗闇を撫でる何かに導かれ、チャーリーの手は何かを触ろうと、何か、ありもしなかった何かに輪郭を与えようと、動きました。
――ある。手がくすぐったいから動かしてるだけじゃない。ここに、何か、ある
チャーリーは屋根裏部屋の真ん中で、なかったけど触れた箱に、出会いました。中には、金色のゴーグル。それは暗闇に色を浮かび上がらせて、当然に、金色だったのです。
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