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「……!」
私は目の前の光景に一瞬息を詰めた。
あの長椅子に誰かが寄りかかっているのか、きらきらと日の光を反射する金色の髪が、海から吹く風に軽やかに舞っているのが見えたのだ。
まるで全身を雷にでも打たれたように、前につんのめるように両足が停止する。白昼夢をみているのだろうか。
私は思わず眼鏡を外して目をこすった。
この庭園に足を踏み入れてから、リュイ-シャの幻影を追っていた。
ありもしないものを見ようとしている自分がいた。
もう一度、あの人に逢いたいと望む自分が――。
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