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「……もう、大丈夫です。はなして、下さい」
ささやくようなソプラノの声。少しそれは小さかったが、年の割にはしっかりとした口調だった。
「あ、すまないな」
私は子供の頭をなでるのをやめ、ようやく顔を上げてじっとこちらを見つめるその視線を受け止めた。
「あっ……」
今度は私が驚きの声を上げた。
そこには忘れることがない、彼女の碧海色の瞳があったからだ。
やはり見間違いではなかった。
それでは、この子供は――。
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