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「よいしょ……っと」
子供は再び落ちた本を拾い上げた。
そして、長椅子の上に積み上げていく。
淡々と繰り返されるその作業を私は黙ったまま見ていたが、好奇心に負けた。本当にこの子供が本を読んでいたのかどうか確かめたかった。
「ちょっときいてみてもいいかね?」
「なんですか」
「君は船が好きなようだね」
そう話し掛けると、あの青緑色をした瞳が生き生きと輝きはじめた。
「はい。いつも時間があれば、ここからアスラトルへ来る船を見ているんです」
「そうか。じゃあ、エルシーアの軍艦はよく知ってるんだろうね。最近作られたアストリッド号は見たことがあるかね? あの船は大砲を二層甲板に98門も配備し、港を守る浮き砲台として、にらみをきかせてるんだよ」
「あの」
子供が鋭い口調で私の言葉をさえぎった。
「なにかね」
「あなたの今いわれたことには、間違いがあります」
「ほう」
「アストリッド号が作られたのは今から六年前。それに彼女は、三層の砲列甲板を配備した大砲100門を備える1等軍艦です」
「そうか。そう言われれば、君の言うことの方が正しい気がする」
いや、まったくもってそれは正しいのだが。
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