Ⅴ 命の光

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「あなたなら彼女へ乗艦することもありませんか、大佐どの」  私は眼鏡をかけなおした。ちょっと得意げに微笑む子供の無邪気なそれに、ついつりこまれそうになりながら。 「その軍装は大佐だと思ったけど。……違っていたら、すみません」 「いや、確かにそうだよ、君」  子供は急に視線を私から逸らせた。小さくため息をついている。 「ごめんなさい。だったら、お祖父様か父様に用事があって、うちへ来たんですよね。でも、二人ともここにはいません」  先程までの生気に満ち溢れた目の輝きは消え失せていた。 「お祖父様はあと一月ほど屋敷に戻らないと言っていました。父様の方は……何時帰って来るのか、僕には教えてもらえませんでした。だから……」  子供は膝を抱え、風がその柔らかな髪を乱すままに任せながら、陽光にきらめく海を見つめていた。
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