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「そうか。私も一昨日、アノリアの哨戒任務から戻ったばかりでね、知らなかったよ」
そう呟きつつ、私の視線はグラヴェール屋敷の方を向いていた。
あちらにエルシャンローズの庭園があるのだ。
アスラトルの街でグラヴェール家の庭園は、エルシャンローズの隠れた名園として知られている。今日はわからないが、領民や王都からの観光客が、花を見にここまで訪れるというのを聞いたことがある。
「折角いらしたのですから、お茶でもいかがでしょうか。それにエルシャンローズが丁度見頃なのですよ。庭園でお待ち下さいませ――昔のように」
私ははっとした。
「エイブリー」
執事はさも理解したように頷いた。
「リュイーシャ様のお作りになった庭園は、エルシャンローズが咲くこの季節が一番美しいのです」
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