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リュイーシャ。
その名前を聞いた私の心は、一瞬で七年前に戻った。
あの頃の私は二十七才の海尉で、狙った海賊は必ず拿捕するアドビス・グラヴェールの船に副長として乗り込んでいた。
リュイーシャはアドビスの妻だった。
二十才という若い身空で彼と結婚したばかりだった。
月影を映す長い金髪を海風に舞わせ、海の色と同じ青緑の瞳を持つ故に、彼女は海軍内で『エルシーアの碧海の乙女』とも呼ばれていた。
リュイーシャは風を自在に操れる「術者」だった。それ故にアドビスの船に乗り、嵐や海賊との戦闘で艦隊の窮地を幾度も救った。
崖に一輪だけ凛と咲く白百合のようなひとだった。
そして、もう、彼女はいない……。
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