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出張
「おい………」
水嶋の声が聞こえた。
ずっと水嶋の事を考えているからだと思うけど、もう病気だ。歩く隣に、耳の側に、常にいる。常に感じる。
瞼が重くて目が開けられない。
ってか開けたくない。現実に戻りたくない。
「遅刻するから離せ」
?
声が近い?
試しに声の出所を引き寄せると……サワサワと柔らかい物が頬を撫でた。
「ん?」
何これ。
何かおかしい。
これおかしい。
今度は目を開けたくても開けられなくなった。
ジワッと背中が熱くなってる。
そっと片目だけを開けてみると………目に入ったのは眉間の皺だ。
「えっっ?!本物?!」
首が生。
肩も生。
その下も生。
生物づくし………
「いい加減離せ」
「水嶋さん?!!」
やたら気持ちのいい夢を見ていると思ってたのに気が付いたら生の水嶋に抱き付いて寝ていた。
慌てて飛び起きたら素っ裸だった。
そして水嶋も素っ裸。
部屋を見回すとゴミ屋敷。
つまりここは水嶋のマンションだ。
…という事は、飲み過ぎて水嶋の事を考え過ぎて好きだと言い過ぎて………夜中にお邪魔して襲った?
嘘。最低。俺って最低。
これは大事にしたいと思ってる相手にする事じゃない。
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