招待状

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「そう言えばラブホって男二人でも何も言われないんですね」 「入ったのか?」 「うちの水嶋がどこでもいいって言うから、困ったもんですね」 「"入った"んだな?」 「当たり前です、欲しがって大変でした」 「……どんなんだった?」 「ご想像にお任せします」 「お前の妄想という事でいいんだな?」 「………あの人は結構……声を出します」 「うん、出すよな、いいよな、やりがいあるよな、最初はカチカチなのに触るとすぐトロッとなるし気持ちよくて抗えない感じが堪んないよな」 「局長の言ってた触っていいタイプって本当でした、脇腹撫でるだけでもチビりそうな顔します」 「そうそう、水嶋って眉も目尻もツンッとしてるのにタリンと垂れるし感じやすくてビックビクだろ」 「ビックビクです。指でクニクニ触ってるだけなのに筋を引っ張ってるみたいに踊るし、閉じてた足がパクッと……」 ………何の話をしてるんだ。 また佐倉に乗せられて余計な話になってる。 ここはHeavenじゃ無いんだから観客が煩いでは済まない。ほら……鉄板を綺麗にしてるシェフの目が怖い。 「コホ、ウホッ……すいません風邪を引きました。移すと困るし俺はそろそろ仕事に戻ります」 「……それ食えよ」 「食いますよ」 白飯が黒い汁に浸かっているが食う。いつの間にか肉の上に西洋ワサビが山盛りになっているが気にしない。 ツンと来る鼻の激痛を我慢しながら特上牛丼を掻き込んでいると携帯を耳に当てた佐倉が席を立った。牛丼にはまだ手を付けてないが、お返しに山葵を……肉の下に隠してやる。 泣きたいだろうからな。 「……あ……水嶋か?…」 「あ…」 このやろ、わざとだな。 でも水嶋は断るよ(多分) 佐倉の誘いに乗ると傷口に泥を塗るだけだってもうわかってる筈だ(多分!) 奥田製薬には何の影響も無いとわかってる(多分!!) 不本意だったがくれてやった水嶋の痴態を餌に一人でコけばいい。 ムキになるまいと知らん顔をしていると佐倉はとうとう最終手段に出た。 「山本フーズの事で話がある、前に行ったフグの店に来てくれないか?いつ何時かはまた掛け直す…………ん?……今夜は駄目だ、待ち遠しいか?……いや今は安全上の問題があるからまた夜になったら携帯の方に電話する」 ハニーと付け加えて電話を切った佐倉は、携帯をポケットに落としてニヤリと笑った。 マジ惚れの深さを聞いてちょっと同情したのに甘い。甘過ぎた。苺のフラペチーノより甘い。 「……小細工は無駄ですよ、水嶋は今日「も」俺の部屋に泊めますから」 「好きにすればいい、俺は先に出るぞ。江越くんはゆっくり喰え、俺の分も喰え」 「食います、また会いましょうね」 GPSと盗聴器をお見舞いしてやる。 「そうだな」と、もう背中を向けた佐倉は全然凹んでない。余裕のある背中を睨んでいると……… 二人分の伝票が残されている事に気が付いた。
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