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舗装道路を外れると、地道に入ったトラックは益々揺れが激しくなった。ガチャガチャとかチャリチャリとか部品が崩壊しているような音が増してる。 ハイキングコースのような道はクネクネと畝り、道幅は狭い。トラックの特性とも言えるが荷物を運ぶ為の車体は横幅より縦の方が高い。何かあれば簡単に横倒しになる可能性があるのだろう、慎重に進むトラックのスピードは歩くより遅かった。(トラウマ) そのまま少し進んだ先で、急な曲がり角に入ると道は二手に分かれていた。 片方は丘に続く細い散歩道、片方は車の轍が付いた一応道路と言える幅がある。 関口はトラックを止めてエンジンを切った。 「車はこれ以上入れない、俺はここで待ってるから二人で行ってきな」 「ありがとうございました。水嶋さん、行きますよ」 「……ああ」 真ん中に座っていた水嶋を置いて先にトラックを降りると、ブワッと風に乗った花びらを浴びた。 点在していたピンク色は咲き誇る桜の花だった。 満開の桜は花吹雪を撒き散らし、地吹雪と一緒になって前が見えない程だ。 隙間なく立ち並ぶ桜の中、二人並んで丘を登ると教会は正面に見えた。 来客だろうか、沢山の人が赤い絨毯を囲んで整列をしていた。 見事に晴れ渡った空が青くて……どこまで青くて、街の狭い空よりずっと青くて、桜の花が太陽の光に透けて透明に光ってる。 「凄いな……綺麗ですね、ちょっと遠いけど見えますか?水嶋さん目が悪いでしょう」 「十分だよ」 どうやら最期の最後で間に合ったらしい。 水嶋と並んで教会を見下ろしていると、背中を押すような風がびゅっと駆け抜け花びらを運んで行く。 気まぐれな風に回ったり落ちたり、また舞い上がったり… 丘の上を吹き抜けた風が教会に届く頃、花弁に込めた伝言を受け取ろうとしているように教会の大きな二枚扉がゆっくりと口を開けた。 現れたのは風に踊り上がる長いベールだった。 わっと起こった拍手と歓声が遠くから聞こえてくる。白いドレスは太陽に輝き、舞い踊る花びらの中で友梨が笑ってる。
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