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きっかけは佐倉達のせいだが無駄な固定概念を取っ払ってくれたのもあの人達だ。
視点を変えて水嶋を見ると、人物形成のグラフが酷く歪んだ面白い人だった。
踏み込まざるを得なかった水嶋の実態に、ブンブン振り回された末にこんな事になってる。
しかし思い込みでも勘違いでも無い。
完璧に見える仕事はもっとサポートが必要だと知った。私生活はもっともっとサポートがいる。
それでも貰える物の方が大きいのだ。
畏怖と尊敬が変質しただけじゃない。
返事が無いから怒っているのだろうなと、水嶋の顔を見上げると予想とは裏腹に表情が無かった。
「水嶋さん?」
「……風呂……借りるぞ」
「水嶋さん!ちゃんと聞いてください」
「うるせえ、お前の発情に付き合ってる暇なんかないんだよ、それに俺にはそんな価値は無い」
「……価値は俺が決めます、俺はもう水嶋さんしか考えられない!」
「ちょー恥ずかしい奴だな」
「恥ずかしいのは水嶋さんでしょう!チ○コはみ出てます!」
顔を歪めてベッドから足を下ろした水嶋のズボンは床に落ちて下半身丸出しになっている。
下を見てひっと変な声を出した水嶋に、出てくるのは笑いしかなかった。
あの鬼のような仕事っぷりは「天然」であるが故、思い込みの激しさから発生した副産物なのだ。
これを知ってる奴は俺以外きっといない。
「この話は今度でいいです。お風呂に入って来てください、後でいつものトレーナーを放り込みます」
背中を押すと下半身丸出しのままなくせに携帯だけは持ってる。
「俺に触んなよ、おい!」
「いいから早く、こっちが恥ずかしいです」
「誰のせいだ!やっぱり今死ね!」
「嫌だよ馬鹿!」
ガツンと殴られた後頭部の痛みが嬉しい。
ギャーギャー喚きながらヨロヨロと風呂場に入っていった水嶋は本当にいつも通りのちょっと馬鹿で、ちょっと抜けてる偉そうな先輩だが、多分、きっと、一生忘れないと思う。
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