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水嶋が大人しく「愛」を語る相手になるなんて妄想の中ですら成り立たないけど、もうちょっと……こう……柔らかくなってくれないか、なんて淡い期待をしていた。
しかし、水嶋の頭の中は相変わらず仕事でいっぱい……ってか仕事しか無い。
あっという間に未払金の回収を終えた水嶋が何も言わずにまた組んでくれた事にはホッとしたが、使用前使用後とで基本的な関係性の変化はほぼ無かった。
「ほぼ」ね。
ほぼ。
……1つだけ変わってしまった事がある。
週末になればまた酔っぱらって雪崩れ込んでくるかとアパートで待っていたのに来なかった。
その次の週はわざわざ誘ってみたが「死ね」が返事。
仕事以外の話をしようとすると「死ね」
「美味しいですね」にも「死ね」
「夕焼けが綺麗」にも「死ね」
そんな死ね死ねを連発してもし本当に死んだら後悔するくせに(意外とチキン)それでもやめない。
何でわかるかって水嶋はそういう人だって知ってる。知ってるからこそ好きなのに本当に厄介だ。
毎日がそんな状態なのに油断するとニヤついてしまうのは俺が馬鹿だからでもMだからでも無い。
水嶋の態度は、拒否とか嫌悪とか大っ嫌いとか顔も見たく無いとか……(これ以上並べるとそれこそ死にたくなるからやめておく)それは無いのだ。とにかく簡単に言えば照れているだけだと解釈してる。
我ながら前向きで楽天的だと思うが……やめろとか死ねとか言いつつ、あの時の水嶋は全力で性感に身を委ねてた。
感度がいいって凄いのだ。
漏れ出る声を罵倒で誤魔化し、手に、体に……繋がった秘部から肉を伝い血管を駆け巡る血液が教えてくれた。
いくら予備知識と多少の経験があったとしても男なのだ。本当に嫌しか無いならいくら泥酔していたとしても噛むなり蹴るなりもっと強烈な拒否反応を示す。気持ちがあるとまで言わないが、ある程度の許容が無ければあんな事は絶対に成り立たない。
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