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「つまりは…納品を間違えたって事ですか?」
「間違えるかアホ、キサンタンガムが無かったからグアーに差し替えたと今説明しただろ、因みにキサンタンガムはグアーガムの倍は高い」
「それはわかっててやったって事?詐欺ですか?」
「詐欺って程じゃねえよ、普通ならバレない。妙にデキる製品管理部の誰かがいつもと食感が違うって見破ったらしい、お前は一旦会社に戻れ。俺はこのまま誤魔化しに行く」
「は?嫌です」
水嶋一人で行かせるとどうせロクな事にならない。
もう後悔するのは嫌だった。
「俺も行きます」
「アホ、どうなるかわからん、お前がいたら邪魔だ」
「尚更水嶋さん一人には…」
「帰れ、これは命令だ。お前まで来たら会社ぐるみの印象が強くなる、間違えた、手配ミスだと言い張るには俺一人の方がいい」
「じゃあ俺は水嶋さんの代わりに出来る事をやります、何でも言ってください」
「帰れ」
携帯の操作をしながらもうこっちを見ない水嶋は、止める間もなく道路に飛び出てタクシーに乗ってしまった。
行き先どころかどこの会社なのかもわからない。
水嶋の事だ、ただ単に利益を優先させたのでは無く何か事情があったのは間違いない。
そしてそのどれも、これも、いつもの如く会社に報告せず自分で背負ってしまうのだろう。
「こんな時の為に俺がいるのに……」
水嶋がまずやる事は「キのつくガム」、高い方の在庫があるか調べて手配の準備をする。
そして、そんな時頼るのは恐らく「つぶらな瞳」のデカマッチョだ。
運送部は遠方じゃ無い限り午後は事務所に戻ってる筈だ、出てくれと神様にお願いしながら運送部の事務所に電話をかけてみた。
「はい?誰?」
「関口さん?江越です。今…この数分前に水嶋さんから何か連絡無かったですか?」
「今日の話か?無いけど、何だよ…また何かやらかしたか?」
「いえ、あの最近……多分…今週だと思うんですけど「グ」の付くガムをどっかの会社に納品してませんか?」
「…………グ?」
「……グの付く……ガム……製品がもちゅっとする奴……」
「グ……ガム…もちゅ?…何の事だ」
うん、そうなるよな。
しかし、商品の名前は全く覚えてない。
生きていく上で全く耳にしない音を並べられても覚えられるわけ無い、いっその事商品の名前は全部品番にしてくれたら20桁でも30桁でもそっちの方が覚えやすい。
「グ」は間違いないが何か強そうな音からのイメージしか残ってないから取り敢えずそれを伝えてみた。
「グ……グオーみたいな……名前です」
「ああ、それは多分グアーガムだな、お前ちょっとは勉強しろ。出てると思うけど俺は知らんな、調べようか?」
「お願いします!」
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