招待状

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招待状

もう1日休めと会社から言われてそのまま週末に突入。合計3日もの間昼も夜も水嶋と一緒にいたせいで口が寂しくて隣が寒い。 入社してもうすぐ一年経つが早く休みが終わらないかと仕事の始まりを待ったのはこれが初めてだった。 ウキウキして出社した月曜日。 待っていたのは「ザ、日常」だった。 水嶋は容赦なく飛ばすし怒鳴るし蹴るし怖い研究所に行けと言うし…… 研究所は嫌だけど今回だけは必然だった。 牛へ投下したビタミンの報告は土日を使って水嶋が仕上げてた。さすがプライベート無し男だと思う。 まあ俺がやったらきっと牛達への悪口で埋まるからそれで良かったが、レポートだけじゃ伝わらない細部を誰かが直接付け加えなければならない。(つまりビタミンを混ぜた餌を食べた牛がどんな顔をしたか) 当然「無理です」と断った。 報告書を書いたのは水嶋だ、体調が悪かったせいで覚えてるのは面白い水嶋と間抜けな水嶋とアタフタしてる水嶋とクソ根性の悪い牛の笑顔だけだ。 これは決して逃げじゃない、水嶋が行くべきだ。 散々押し付けあった後にじゃんけんをしたら水嶋が負けた。 言い訳をしたくないが一応付け加えると、水嶋は飛ばしまくるがどこでもいつでも高圧的に振る舞うって訳じゃない。時には人懐っこい話好きなお兄ちゃんになるし(主にナンパ時)時には礼儀正しい誠実な好青年、時には浪速の商人(あきんど)、つまり研究所の圧にも上手く対処するには水嶋が適任なのだ。もう一回言っとくがこれは研究所に行きたくないからっての言い訳じゃない。 ジトッと湿った視線を残して渋々研究所に向かった水嶋を見送った後は一人で外回りをする事になった。
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