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店の中はシンと静まり返っていた。 佐倉も、いつもHeavenに(はべ)っている邪魔でうざいオブザーバーも誰もいない。 体が痛い。 物凄く痛い局部は無いが細々痛い。 ズキズキじゃなくてチクチクって感じだ。 痛いのは嫌いだ。 動いた途端にどこかが痛み出しそうで顔だけを動かした。佐倉が蹴り飛ばしたテーブルも散乱した椅子も壊れたグラスも見当たら無い。狭い店の中はもう整然としている。 何時だろうとジャケットのポケットの中にある携帯を探っていると、カウンターの影からヒョコッとちょび髭の顔が首だけを出して笑った。 「起きた?」 「店長……」 誰もいないと思ってたのにいた。赤城店長は「ちょっと待ってね」と振った手だけを残し、一度中に引っ込んでお絞りを持ってカウンターから出てきた。 「大丈夫?」 「すいません……俺…」 「暴れてスッキリした?」 「いや……」 毒気は抜けたが汁気はたっぷりなのだ。 パンツとパンツの中のパンツがアルコールやら何やらに濡れてスッキリどころかベチャっとしてる。
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