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廃墟遊園地
帰宅部の僕には家に帰る前に寄る場所がある。
学校の裏山。小高く盛られたちっぽけな山に僕は学校が終わるたびに登る。登ると言っても、そんな大それた山ではない。登山道は中腹までアスファルトで舗装されているし、その先も所々に階段があって、ほんの三十分もあれば頂上までたどり着ける。それでもこのちっぽけな頂上からこの小さな街を見渡すだけの高さは十分にあった。
頂上には潰れた遊園地がある。遊園地とは言ってももう回らないコーヒーカップともう廻らない観覧車、それに空へと螺旋状に伸びる展望台があるだけである。かつてこの場所は市民の憩いの場であった。しかし郊外にできた大きなショッピングセンターが徐々に客足を奪っていき、七、八年ほど前に潰れた。市民から忘れられ取り壊されることすらなかった遊園地は今もこの場所に残り続けている。
しなびて意味を成していない黒と黄色のロープをまたいで、僕はいつも通り「入園」した。割れたアスファルトから顔を出した草木を風がなびかせる。さらに少し遅れて僕の髪とカッターシャッツを涼しげになびかせた。
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