約束が叶う時

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約束が叶う時

 成績も優秀だった僕は無事北高に合格する。そうして迎えた入学式の日。僕は忘れ去り続ける街の通学路を一人で歩いていた。木枯らしはもう春風に姿を変えている。  公園の近くで犬に吠えられると、飼い主の男性が僕に頭を下げ愛犬を叱りつけた。横断歩道を渡ろうとすると、中年女性の乗った白い軽自動車が僕に道を譲った。同じ制服を着た北高生が、緊張気味の僕を追い抜く。こうした小さなきっかけが街を意識だったものにしていると気づいたのはいつ頃だったのだろう。僕もまた街そのもので、その意識のきっかけの一つなのだと。  そんな足取りで校門までたどり着くと、すでにいくつかの部活が勧誘活動を行っていた。僕は迷うことなく天文部のビラを受け取る。話を聞こうと足を止めると、春風が忘れ去った匂いを運んだ。斜め前でビラをもらった女子も足を止めたのだ。天文部の先輩を囲むようにして立つと、彼女と何気なく目があう。
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