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「俺は単純にすげえと思ってたけど、2年になってから歩己がときどき体調崩して、保健室行くようになって」
「う、うん……?」
「母ちゃんにそのこと話したらさ、お前のこと頑張りすぎだよって。こうしなきゃって自分を追い詰めて、それが体に出ちゃうんだろうって」
「え……」
「ごめん、嫌な話だったら言って? 俺の母ちゃん心理士でさ、いろんな子供とかも見てきたから、分かるんだよ」
「へ……え」
知らなかった。克己くんのお母さんて、そういうお仕事をしていて、私のこと、そんな風に見ていてくれてたなんて。
「確かにお前はいつもがんばりすぎてて、少しは休めよ、もう少し俺みたいに自分に甘くしろって、言いたくなる時はあるけどーー」
目を閉じてうんうんと頷いてから、
「けど、そんな歩己を俺は尊敬してる」
と、今度はしっかりと、私の目を見つめて言った。
「え、は? 私をそん、そんけい?」
「そうだよ。お前、できなくてもできなくても、いつも最後まで食らいついてくだろ。それをやりすぎだって呆れる奴も、無駄な努力だって笑うやつもいるかもしんないけど」
「けど……?」
「けど、それってやっぱ、凄えことだろ。それにお前、絶対に人の悪口言わねえよな。女子の世界でそれを貫くのが、どれだけしんどいことかってくらい、馬鹿な俺にでも分かるんだよ。なあ歩己。いったい誰に、なに言われたか知んないけどさ。もし誰もお前のことを認めてくれなくても、お前自身さえお前を認められなくたって、俺が認めてやる」
「克己……くん」
「認めてやるよ、歩己。お前はスゲー奴だ。焦ることなんてないよ。お母さんにもさ、歩己の気持ち、もっとちゃんとぶつけてみろよ。お前優しいから、あんまりはっきりと物を言わないだろ。そいうところもす……良いところだと思うけど、言わないと伝わらないことだって、あるんだからな?」
「はっ……は、ハイ!」
思わず返事がうわずっちゃって、克己くんが「なんだそれ」とふき出している。
「お前、己を歩むと書いて歩己だろ。今日がだめなら明日って、一歩一歩、ちょっとづつ進んでいきゃあいいじゃんか」
「……あっ」
その言葉に。
忘れていた心の記憶が、ぱっと光り弾けた。
克己くんがきらきらと、笑いながら駆けていく。自分の傘をすっかりと私に被せて、降り止まない雨の中に。
その背中がなおも振り返って、
「言っとくけどな、お前は俺の目標なんだよ! 俺の目標はスゲーんだよ、悔しいけど、スゲーんだからな!!」
なんて言う。
「何それーー」
そんなの、もう卑怯だよ克己くん。
だって、そんなこと言われたら私、もうがんばるしか、なくなっちゃうよーー。
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