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とは思うものの、じゃあ何をどうがんばれば良いのか、現実にどう動くべきなのかは皆目見当もつかないままに、次の体育の時間が訪れた。
もちろん怖いし、ドキドキしているーーでも今日は、妙に心がどっしりとして、落ち着いている自分もいる。
スタートライン。
ここに立ったら一人きり、誰の力も頼れない。そう思っていた。
でも、違った。
『認めてやるよ、歩己』
そう今は、心に強い守護神がいるーー。
ホイッスルが鳴り響けば、第一列目の五人が走り出す。私は第三列だ。
一斉に走り出した五人の中でずば抜けて速いのは、私につらく当たってくる武田さん。
陸上部のエースだし、悔しいけれど、いつもながら鮮やかなゴボウ抜きだ。
いったいどんな練習を重ねたら、こんな風になれるのだろうーー。
ボーイッシュなボブヘアの、体格の良い一騎が校庭を駆け抜ける。
オリンピックさながらにそのフォームを見つめていると、しだいに悔しさなんか吹っ飛んで、気づくことがある。
そう、武田さんて、何というか凄くこうーー……?
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