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私は自分の順番も忘れて、ぶっちぎりの一位でゴールした武田さんに小走りで近づいていた。
じっとその顔を見つめていると、
「な……なんだよ。文句でもあるわけ? あたしに文句言う前に自分の……」
「凄いね」
「はっ?」
「ももをさ、高く上げるんだね? かかとが膝に届くくらい高くあげて、蹴り出すんだ。そうでしょ?」
「ーーう、うん……?」
いきなり何だこいつって顔してるけど、知ったことじゃない。私は私の思いを、素直にぶつけていくんだ。
それで良いんだよね、克己くん。
問いかけたら、胸の中の克己くんがきらきらと笑ったから。
それだけで、勇気は何倍にもなる。
「他にも、速く走るコツってあるの? その、良かったら私に、教えてくれないかな?!」
ああ、言えた。
緊張とドキドキでほっぺたが熱い。
鼻で笑われて終わりだろうか。それでもいい。私は私の思いをーー。
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