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午後の体育は密かに雨を期待したのだけど、予報外れのカンカン照りが初秋の校庭を照らしている。悲愴だ。
スタートに膝をつけば、むっとする砂埃が鼻から喉を虐めてくる。
ここに立ったらひとりきり。誰の力も頼れない。
先生の合図で五人が一斉に走り出す。
やるしかない。
体のコンディションは悪くない、視界も良好。自分ではしっかりと地を蹴っているーーつもりなのに、ひとりに抜かされ、また抜かされて、気がつけば今日も最後尾。
ーーやっぱり、みじめだ。
だって努力なんていくらしたって、できないものはできないじゃない。
みんな生まれ持った才能とか、身体能力とか、そういうものが私よりも優れているんだ。
ああ、みじめ。私がダメなんだーー。
そんなこと、言われなくたって自分が一番分かっているのに、
「穂高さんのせいでタイム縮まらないんだからね!」
と威嚇してくる女子リーダーと、そうだそうだと口を揃える取り巻きたちはなんなのだろうか。この人たちには苦手なものが無いのだろうか。同じことを、苦手分野で言われたらどう思うかと想像したことはないのだろうか。
言いたいことは山ほどあるのに、ひとつも言葉にはならない。
それは怖いのもあるけれど、何をどう弁解しても、できないのは自分で、足を引っ張っているのは自分だという事実と後ろめたさが、どうしたって先に立つからだ。
「穂高さんさえいなければーー」
そんなんこと分かってる。
分かってるから言わないで。
怠けてる人にそれを言うなら分かる。でも頑張ってるのに、言わないで。
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