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嗚咽が治まっていくと、だんだんと頭が冷静さを取り戻し始めて。
無関係の克己くんに何もかも吐き出してしまった愚かさに、今度は冷や汗がふき出してくる。
どうしよう、嫌われたらどうしよう。いきなり叫び出したりして、絶対変な奴だと思われたよね。
「あのさ……」
その口元がなにかをいう前に、私は思わず後退った。
「いやっ、違うの、今のはそのなんていうか……、ご、ごめんね気にしないで!? なんでもないからほんと、わす、忘れっ」
「はー、やっぱりなー。聞いてある意味ホッとしたわ」
「そう!? ななら良かった、じゃ、じゃあねバイバイ」
「うちの母ちゃんがさ」
「へ!?」
「前に言ってたんだよ。お前のこと、心配だなあって」
「えっ……」
「お前さ、小1年の頃から字とかめっちゃ上手だったろ」
「え、なに、字……?」
なんだろう。克己くんはいったい、何が言いたいんだろう。
分からない。全くもって、読めない。
「読書感想文とかも、書けば必ず金賞でさあ」
「……」
そうだったろうか。いや、確かにそうだった。でもあの頃も、綺麗に書かなきゃ、ちゃんとやらなきゃとプレッシャーばかりが先に立って、賞を取った時も、喜びよりも安堵が勝ってた、ような気がする。
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