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子供のころから私は、自信なんてこれっぽっちもなかった。
なのに周りの大人たちからは、凄いね、こんなに勉強できて偉いね、字が綺麗で凄いね、歩己ちゃんは何だってできるね、できる子、できる子……。
褒めてくれるその陰に、妬みとか皮肉とか、そんな物が見え隠れしていた。
だから苦しかった。
本当の私はそんなんじゃないし、いつだって怠けたいし、つらいし、逃げ出したい。
凄いのは見せかけだけで、周囲のーーママの期待に応えなくちゃって、ほんとはきっと、凄く無理してた。
それでも去年までは、努力すればそれなりに取りつくろえることもあった。
なのに中2になったら、急に勉強が追いつかなくなって、自分よりできる人の能力ってやつを、まざまざと見せつけられたりしてーー
とにかくそれまでできていたことまでが、最近、ちっとも上手くいかなくなって……。
「なんだよ最近。元気ねえじゃん」
「えっ」
ーーびっくりした。心を読まれたかと思った。
昨日の席替えから、奇跡みたいにとなりの席に座っている克己くんが、目をまんまるとさせて私の顔を覗き込んでいる。
そんな仕草は小1のときのままだ。
「笑うなよ。あっ違った、笑え。よし、笑ったな」
よしよし。
と言って、折り紙の続きを折る長い指。
私の返事など聞かないマイペースさが、気を遣わせないからとても楽だ。
ズレたメガネを鼻に押し上げて、真剣そのものの横顔をじっとみる。
克己くんは不思議だ。
本と折り紙が大好きで、運動は少し苦手みたいだけど、いつも大勢の友達に囲まれていて。
まじめなのに明るくて、楽しいことが大好きで、人の悪口は絶対に言わない。
それどころか、
「えー、お前そんなに自主勉進んだんだ。スゲえな!」
って、何の屈託もない笑顔で、いつも誰かを褒めている。
妬みなんてひとつもない褒め言葉だ。だからみんな嬉しいし、自然と友達になりたくなるんだと思う。
もちろん私も、そのひとりだ……。
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