マルグリッド・プレッツェル

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 ‘’人の願いを安請け合いしてはいけない’’  いや、人でなくても。他者のお願いを安請け合いするべきではないのだ。  そんなライフハックを俺が苦々しく噛みしめるのは、自分の部屋の壁が木っ端微塵に吹き飛んでからだった。  元凶の悪魔ーーいや、天使は高らかに笑う。 『これであなたの悩みは全て解決したわ』  一般的に部屋がふき飛んで悩みが増えることはあっても、解決することはないだろう。あっても精々大富豪の遺産相続か空き家問題に悩んでる親族くらいのもので、もちろん俺ではない。  俺はたまらず叫ぶ。 「このクソ悪魔ッ!!」 『もう、何度言ったらわかるの?悪魔じゃないわ、天使よ。これで学校に行かなくて済むわね』  上空に浮かぶ白い羽の生えた女は、天使というわりには妖艶な笑みを浮かべ、俺の額にキスをした。これは俺と自称天使の女との結晶をめぐる小さな物語だ。
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