あいまいみー

1/1
前へ
/1ページ
次へ
 永遠の友達。お姫様はこの世界にはいない。そもそもお姫様は存在していない。僕じゃなくて他の王子様を探してよ。優しい王子じゃないとだめだよ。僕は王子様じゃない。優しい着ぐるみ。悪魔の渦。小さな旅は一瞬にして終わる。淀んだ海。偽の王子様は流木の剣を持つ。その剣はにこやかにこちらに向けられている。iPhoneにおさめたから見続ける限り永遠に。脳内で姫が消える。持ち物は、透明のなんでもない貝殻、四百円のブックオフのCD(自由人は悪魔の白いアクアのなかに)、カラオケのおしぼり、色とりどりのグミと筒に入ったポテトチップ。冒険の最中、流れてくるのは中島みゆきのわかれうた。 何度も何度も。浮遊する。沈んでいく。穏やかな悪魔が流れ込んでくる。小さな無意識の悪意の集合体。急激に胸をえぐっては、じくじくと迫ってくる。何度だって繰り返す。わからないの正体を知るためだけにWiFiで悪魔の海を泳ぐ。真っ暗闇を泳ぐ。撥ねる声が続く限り。天使でもあり悪魔でもある。悪魔だけが蝕む。その悪魔は本心から自分を人間だと思い優しい顔をむけてくる。調子のいい声、歴代のお姫様を名指しで、陽気な薬ににやられている。可愛い声をだして。表のいい顔をして。大事を全部真横に置いておいて。きっといい人。人間界において。私こそが悪魔。魔法が撥ねる。空が明るい。体が動かない。青い光からはずっと石崎ひゅーいのガールフレンドを流している。青い光の横にはティッシュの山。幻想的。現実。あれからずっと神様を見ている。  いつかの渦。見ず知らずの継母に無視されてなにも持っていない。何人かの継母に切り捨てられた。よくある街をよくある傷に気づかずに歩いている。なにも武器を持たずに。遠い記憶。暗い路地に見つけた小さなお城の黒い思い扉。頭上を山手線がぐるぐるまわる。ぼろぼろの茶色いソファ。ふわふわのライオンの門番。王子様とお姫様の境目をなくす可愛いライオン。恋は風。知らないありがたいお坊さん。ちかちかする無数の光。いちごの小さな椅子に可愛い上目遣い。一瞬ですいこまれる。何者でもって思う。普通の青年の顔した遠い国の王子様に出会う。私はできそこないのシンデレラ。気づいた時には大事だと思っている。信じてみることにする。信じたいと思う。何度か電波を送りあって偽りの愛を話す。TOYOTAの車でイオンの屋上から宇宙へジャンプする。知らない国のユニクロで買い物をして見たことのない綺麗で汚いお城でギターを鳴らす。この部屋にカギはない。カップうどんのご馳走を平らげてスーパーで買ったお酒を少し飲む。でっかいふわふわのベットで小さい画面をのぞきこみ銀杏BOYZを奏でる。長澤まさみがえげつなく可愛い。国中を横断して風車を見る。煙草をふかす。みかんを買う。駄菓子を買う。コメダ珈琲で作業着のおじいさんと派手な花柄のワンピースのおばあさん。四人掛けの席で隣に寄り添う。このようになんてことは起こらない。不倫の話題。売れない理由。音楽のことなんて知らないよ。文字数を増やすためだけに、もうぐるぐるするのはしんどいな。やっと記憶から消えていくのに愛おしいと脳が勘違いしてしまう。そして、大事はいきなり終わる。そういうことだったんだよ。くだらない。深夜零時を越えてしまって魔法がとける。魔法がとけた後もふたりは手をつないでメリーゴーランドでまわる。狭すぎてまわれないネットカフェで。小さな窓で知らない世界を教えてくれる。もう忘れてしまっているけれど。だらだらと魔法を信じているから残るものはただの灰。その灰もいずれはなくなって、ただただ見えない傷だけが残る。いずれ全てはなくなってシンデレラであることすら否定する。完全になくなれば楽になる。もういない私ともういない王子様。普通の毎日を普通に生きられない私のなんでもない一番苦しい浮遊。実態に触れたはずなのに、思い出してみようにも悪魔しか思い出せない。  一度魔法がとけてしまってぼろぼろ。もう入りたくても二度とは深くは入れない穴の中。ひとりだけ乗せたメリーゴーランドがぐるぐるまわる。はやい時遅すぎる時ぐるぐるまわるうちに擦りきれていく。いくつかの時空を越えて木馬は新幹線に乗って五、六時間で違う訛りの国にやってくる。空想の中で三匹の尊いネズミが私を励ましてくれる。ここだけをずっと繰り返している。曖昧な毒を飲みかけて死にそうな私に救いの手。レモンとソルトの大人の飲み物。大人になれないから毒にしかならない。特にこんな夜には悪魔に変わる。消えそうになるお姫様。悪魔に変わる。ずっとぐるぐる回る世界の一部。真髄は出会ったこと、つながったこと、そこではなく変化なのかもしれない。悪魔な幻想のお姫様に「大丈夫ですか」と一番のっぽのネズミが良い声で二回言う。続いて、「ふたり、仲良くするのでしょ」とジャニーズみたいな、けど気迫のあるネズミが何度も言う。さらに、透き通る安定した声の優しいネズミが「離れたほうがいいこともあるよ」と言う。馬をひく男が「この世界を諦めるの」と聞く。キラキラに救いを求めてただっぴろい草原を独りで歩く。お風呂にも入らないで堤防について白い車しかとまってない。堤防を一人で歩いて写ルンですにおさめる。もう二度と会わないモザイクの顔、幸せそうに。きらきらの海とぼろぼろの白い猫。知ってる名前のファミレス。口ずさむ叫ぶ流行りの失恋ソング。そして、遠い地では、お城に残された馬が「お姫様元気がなかったよ」と悪魔に言う。天から「考えちゃうのはしかたない。軽く軽く。」と声が降ってくる。思わぬところで助けられている。何度も何度も。  雨の深夜を旅する。バラの傘をさして、光を浴びて。ベットから起きあがれない。悪魔から起きあがれない。夜中に目玉焼きをつくる。お味噌汁をつくる。部屋からなかなかでられない。けれど、こここそお城。白馬の王子様もかぼちゃの馬車も松坂牛の焼き肉も、歌詞を書くA4用紙もないけれど、ここにしかないお城。また、旅立つ日がくる。その日まで、ここで何度だって旅をする。今まで苦しめてきたカメラという魔法を手に入れて今を生きている。寝られないからベットは捨てた。悪魔の抜け殻を閉じ込めた箪笥も捨てた。  誰も知らないファンタジーで同じ旅を繰り返すことで救われていく。なくなっていく。全て溶けていく。悪魔で天使でお姫様であることで私は私の中を浮遊する。いつだって現在形で浮遊する。そして、形成する。戦争が終わって戦争がはじまる。ぼろぼろになって包帯ぐるぐる巻きで世界を泳ぐ。救いを求めて彷徨う。毎回救われる。奈落の底に落ちる前にかわるがわる王子様が現れる。適当な時にテキトーな王子様が送りこまれてくる。普通の生活の成功だ。まだ本物には出会わない。だんだん窮屈になるその救いはつっぱねないと言いながら奈落の底ぎりぎりに突き落とす。そして、その一瞬は救ってくれる。落ちきらないように。そして、だいたいまともにまでひきあげてくれて、必然的に休ませてくれる。その時かぎりの本当の優しさ。もうここにはない。ずっとないかもしれない。どんどん水の中が暗くなってきた。普通じゃない普通の人間だから永遠には綺麗に泳げない。幻としてもそうやって生きていく。負の感情に引っ張られるのはもったいないと魔法使いも言っている。「枠にとらわれなくても、どうにかなるから。今まで大丈夫だったでしょう。何かあっても大きな何かはなかったでしょう。守られているのです。」って。もう扉を開けないかもしれない。やっと、開いてみたのに何にもなれなかったから。光があるならまだしも、ただ傷がついている。惰性的。気が済むまで漂って、ただただ負の感情もある。その無駄を捨ててはなくして、心にはもやもやな残りかすだけが残って。いろんな魔法があるとしたらそれまでで、自分の魔法だけが偽物なような気がしてしまう。いろんな魔法が存在すると誰かが言うのに、その一言でどんな悪魔も間違いも肯定されてしまうような気がする。だから、ここにある魔法が間違いだって言われている気がしてしまう。恨むことすら抱きしめていることすらできなくなった欠片たち。無で楽でからっぽで。生きているということを漂う。ひねた考えもセブンイレブンのチョコケーキクッキーサンドのアイス美味しいから生きてようという単純な考えに持っていくことも何か違う気がする。壊れてしまうとあっという間なの。壊れるまではじわじわいくくせに、いききるときはいっきにぶわあっていく。泡。魔法に裏切られた気がする。なんであんな魔術を使ったの。不可解。薄っぺらい悪魔がぺらぺら動き出す。絶望的なショックを与える魔術と大事だったマヤカシとなんでを思い悩んだ渦の中。でも、今は無の魔法しかなくてそこからしか悪魔も光もうまれてこない。あまりにもこの魔術を反芻しすぎてまだ王子様がいるんじゃないかって錯覚する。いっそそのほうが楽な気さえする。大事を思い悩むことは多少は贅沢な時間な気がする。けど、無を思い悩むことはもうどうしようもない。果てがない。どうでもよくなってはきたけど、存在否定の魔術だけが腑に落ちない。それだけ。そこだけがずっとぐるぐるしている。私は真剣に向き合ったのに悪魔は表面だけの優しさで都合よく駒を動かす。そういうことだったんだよ。「生きてるだけでいい」、「美しい人」、綺麗な魔法はほとんど消えていく。あの時の嫌な記憶もだいたい泡に溶けていく。きっとこの悪魔がすべてを飲みこんだのだろう。悪魔の海を泳いでいると知らぬ間に他のわがままな可愛いお姫様がいて、お姫様が出会う後のお姫様がいて、魔法のステッキをふった時にはもう王子様は悪魔で独りで。恋は風。あの時出会うお姫様は物分かりがよくてつまらなくて遠い国にいるから知らんぷり。めんどくさいだけ。もう実際には見れない一挙手一投足が暗い小さな海に溢れる。それを小さなスクリーンに何度だってスクショする。近くにいないと大事にできない。かなわない破天荒なお姫様達。叶わない願い。勘違いの王子様、本当は悪魔でただの人間で。いらない。許せないけどいらない。普通の悪魔は傷を羨ましいと言っている。けど、そんなのいらない。漂ううちに論理的になってどうでもよくなってきたな。王子様の悪魔の渦。ずっといたらおかしくなりそう。いい意味でなくて壊れてしまう。優しさを踏みにじる悪魔。悪魔は本当の意味で暗いものに惹かれる。キラキラしたものに惹かれる。表裏一体。許せない敵はすぐそばにいる。それを気にしなくなると真っ新な無が目の前に広がる。ずっと近くにいる予感は悪魔でしかなかった。  一人で雨の横浜の観覧車に乗る。雨粒ばかり曇った世界が広がる。ピンクの遊具に黄色い車。黄色い車は幸せの象徴らしい。遠い国では。また傷ついている。誰といても独り。そこから4キロくらい歩いて傘が壊れて赤いバスに乗って中華街をふらふら歩く。ぼろぼろになりながら違う世界をいきていく。 『占い、五分、千円(今日は雨だから五百円)』 「嫌われて終わらせられたから、終わらせられたから振り回されたけど、ちゃんと愛してくれる人に出会える。」魔法使いのおばあさんは最後にそう言う(本当の姿は占いの合間にヘアカラーの写真をチェックするような品の良い美しい女性)。魔法使いが最後に私を本当のお姫様にしてくれた。そして、私の生活はこれからも続いていく。キラキラした宝物みたいなおもちゃと生きる。なんでもないを生きる。此処を楽しんで此処に死んでいく。それでもワクワクはとまらない。まだまだふらふら漂う。いろんな悪魔を真っ暗な海に置き去りにして好きな世界を好きな魔法で生きていく。なかったことにしよう。小さな画面の中まだまだ薄暗いWiFiは興味本位で漂う。お姫様こそが灰をかぶった悪魔。意地でも灰で磨いてピカピカになるの。きもい。きもちいい。これはたんに冒険の一部でしかないの。同じ場所を何度も繰り返して。 撥ねる声であの時に会っていたのはお姫様が出会う前のお姫様と知る。煙草をふかさなくなったのも他のお姫様の言いつけだと言う。徹底的に知ることは悪いことではないのかも。私なんて元からいなかったんだ。最低の救い。こんな偽物に毎回救われているなんて地獄に堕ちた気分だ。だけど、その一瞬一瞬救われたこと、長引かないこと、これこそ守られてるってことなのかもね。普通の女の子の冒険。曖昧ME。全部招いてしまっている。ぐるぐるぐるぐる。そういうことだったんだよ。新しい神様、それは普通の女の子。偽物たち、地獄に堕ちろとは言わない。けど、幸せにはなってほしくない。今まで生きさせてくれる人たちありがとう。エモい歌を聴いた時だけ感傷的になってしまうよ。君はまたあの声で歌っている。知らない場所で。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加