金運の待ち受けを求めて

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 青年は金を希求するあまりあるものに縋り付いた。自らが使うスマートフォンの「幸運の待ち受け画像」である。彼はインターネットで評判の「金運の待受画像」を逐一ダウンロードし、効果が出ないかなと日々夢想していた。  青年が試した「金運の待ち受け画像」は数多に及ぶ。まずは基本的な金に輝く何かの画像である。金の蛇、金の鯉、金色の鳳凰、黄金竜、マテリアルゴールドバー、枚挙にいとまがない。当たり前だが待受画像を変えただけで金運が上がるなら誰も苦労はしない。青年は何も効果がなくただただ金を詐取される日々を嘆いていた。  そもそも人は何故金に惹かれるのだろうか。金は希少価値があり経年劣化も無く王水でしかその身を損なうことはない。かつてはどこの国でも太陽に向かって拝む太陽信仰があったという。空に輝く太陽と同じ光を放つから金に希少価値が生まれ崇拝の対象になるのだろう。そんなことを考えながら青年は別の金運の待ち受け画像を探すのであった。  次に青年が縋りついた画像は「清正の井戸」であった。金が無いにも関わらずに電子マネーカードになけなしの金をチャージし、明治神宮に出向き清正の井戸の撮影に向かうのであった。他人様インターネット上にアップしている清正の井戸の画像を使っていたのだが、やはり自分で撮影するべきと思い直接に明治神宮に出向いた次第である。明治神宮には同じことを考えている者が多いのか清正の井戸の前には長蛇の列が出来ていた。休日は勿論のこと平日でも修学旅行生がこぞって来ているために長蛇の列は常に途切れない。 青年も3時間並んだ末にやっと清正の井戸の撮影に成功した。  効果はと言うと…… 給料が少し上がったぐらいでこれと言って目立った効果は無かった。その上がった給料も電気代の節約と繁忙期で残業が多かっただけなので金運が上がったかと言われると疑問が残る。  青年はスマートフォンに耳を近づけてみた。カチカチカチカチと内部より異音が聞こえる。内部の電池の寿命が尽きようとしている悲鳴であった。普通なら機種変更をするべきであるのだが、彼は金がないためにそれすらも出来ない。機種の代金は勿論のこと、機種変更の際の事務手数料すらも物怖じするぐらいに金がない。電池が限界でもまだまだ使えるとしてアプリケーションの消去、バックライトの明度を下げるなどして騙し騙し使い続けることにした。
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