金運の待ち受けを求めて

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 これまで縋ってきた待受画像を無意味にスクロールする青年。どれもこれもいい効果はなかったなぁ。そんなことを思いながらスクロールを続ける。スクロールを重ねて最後に見つけたのは初めから入っているデフォルト画像であった。  それは夕日をバックにしたひまわり畑の画像だった。太陽を後光にし、手前に輝くは数多の太陽を思わせるひまわり。「ひまわり畑」とインターネットで画像検索をかければいくらでも出てきそうな画像ではあるが青年はこの待受画像に神々しさを感じるのであった。それは正に古代の太陽信仰をする者と同じであった。 「これにしてみるか」 青年は待受画面をデフォルト画像のひまわり畑に変更した。 どうせ当たるわけが無いだろうと思って買った宝くじが高額当選。何度も新聞発表の番号と自分の宝くじを照合する。組も番号も完全一致。余談ではあるが新聞を契約したのも「引っ越してきたものです」と言われドアを開ければ実は新聞の勧誘で断ろうとしたが「このマンションの人全員契約してますよ」と言った明らかな嘘に騙されて契約したものである。 青年にお金がないのは会社の搾取以外にも細々(こまごま)とした原因があるのかもしれない……  青年は億万長者となったその日に仕事を辞めた。奇しくもその日は工場勤務から本社勤務となり派遣社員の管理の業務を行う辞令が出た日であった。上司も必死で説得はしたもののこれまでの搾取と飼い殺しで会社に対して不満が溜まりに溜まっており、逃げるように会社を去った。それも後輩への引き継ぎも社員寮の後始末も何もせずに去ったのである。立つ鳥跡を濁しまくりの退職であった。  
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