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最初に紹介するのは「尖圭コンジローマ」。 性病と申すと「エイズ!」「クラミジア!」と、いわば性病界の大御所たる病魔共を無性に叫びたくなる諸兄も多いと思う。 しかしこの知名度の低い病魔を最初に紹介する事には理由がある。 というのも、尖圭コンジローマには性病にまつわる恐怖、神秘、危険、冒険、悲哀が全て内包されている為である。まずは恐怖から紐解いてゆきたいと思う。 自明のことではあるが、性病のほぼ全てに共通し、かつ性病を性病たらしめている点は、切欠が性行為であるという事であり、この事に性病の恐怖が集約される。 諸兄姉が各々のパートナー――それは同性でも異性でもいいし、あるいは恋人でもそうでなくともいい――とある日性行為を行ったとする。 その行為では唾液を交換しあったり、陰茎を陰門や肛門に挿入したり、もしくは陰門同士を摩擦しあったりしたかもしれない。 千言万語を費やしても表現し得ない快楽があったであろう。 しかし同時に、その快楽により脳髄が麻痺している間は自身の舌が、陰茎の雁首が、陰門の一つ一つの襞が、相手の口腔粘膜に、陰門周辺の肌の肌理に、肛門の皺と皺の間に存在する本病魔の本性「ヒトパピローマウイルス」を掬い取っていると思料することは不可能であろう。 そのことを思料することになるのは数週間後か数か月後である。
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