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その間ヒトパピローマウイルスは、不覚にもこの本性を掬い取ってしまった諸兄姉の皮膚に存在する微視的な傷に侵入し、新生活を始める。
これが諸兄姉とヒトパピローマウイルスとの共同生活、もとい冷戦の開幕である。
性行為から数週間後、あるいは数か月後、諸兄姉は自身の口腔、陰茎、陰門表面から小さい肉の塊が突出しているのを確認する。
肛門を日常的に弄る嗜好がある場合、恐らく肛門にも同様の突出物があるのを手指の感触で確認できるだろう。最初は少し赤色のする恥垢だと考えるかもしれない。手指、ティッシュで除去しようと試みたところで気が付く。
突出物に根がある。
突出物は明らかに皮膚に根を下ろしており、皮膚と同化している。
さながら提灯鮟鱇の雄のようである。
しかし実際のところ、この突出物は外部から異物がやってきて皮膚表面に根を下ろし、同化したのではない。
ヒトパピローマウイルスが生活を営んでいる証であり、皮膚の内部から生じたものである。だがこの突出物、不思議なことに触ってみても引っ張ってみても痛みも無ければ出血もしていない。
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