fusion

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尖圭コンジローマの本性はヒトパピローマウイルスであるゆえ、まずはこの本性に粘調的な光を当てばなるまい。 諸兄姉の近隣には人間がいるであろう。 これらの人間一人一人をウイルス粒子一つ一つと仮定することが本性の理解に有用である。 ただし、現実の人間と、諸兄姉に仮定して頂く”人間”には差異が存在する。 人間は好ましい相手と結合する際に互いの遺伝子の一部を供給し、子孫を生産する。 従って親と子孫の遺伝子が完全に一致することはほぼない。 ”人間”は好ましい相手に結合し、大量の子孫を生産できるが、この子孫は基本的に”人間”と同じ遺伝子配列を有する。 さらに子孫は好ましい相手との結合を繰り返し大量の子孫が生産されるのである。 子孫が諸兄姉の近隣で飽和すると別の地域に拡散し、その地域で子孫がまた大量生産される、というのが”人間”の基本的な機序である。 諸兄姉の舌、陰茎の雁首、陰門の一つ一つの襞が掬い取った”人間”共はどうであろうか。 舌であれば、それが可動する範囲の口腔に、陰茎であれば、それが接触する包皮や亀頭に、陰門であればその周囲の皮膚に”人間”共は付着する。 と同時に、皮膚に傷が存在しないか、捜索を開始する。 これは”人間”の好ましい相手が、傷でもなければ到達することが叶わない、皮膚の奥深くに鎮座するためである。 相手は「基底細胞」と呼ばれ、幸運にも到達が叶った”人間”は結合し、自身の遺伝子の集合たる精液を基底細胞内に射精する。 ところで、この基底細胞は皮膚の他の細胞にはない特異的な機能を包含する。 皮膚というのは得てして障害、欠損を受けることが多いため、これを補填することが出来るように、基底細胞は強力な増殖能力を有している。 ”人間”は基底細胞に射精することでこの増殖能力を暴走させるのである。 その結果、”人間”の子孫を大量に包含する基底細胞が無秩序に増殖する。 ある基底細胞塊は鶏の肉冠状に、ある基底細胞塊は樹氷状に成長し、まさに神秘とも形容できる形状の獲得に成功する。
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