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replication
「………なんだこれは」
腕にはめ込んでおいたスキャナーデバイスを停止させながら、上司に聞こえないように呟いた。
聞こえるはずはないのだが、何となくあの上司の下についてからは愚痴の類は小声で言う習慣が出来上がっている。
しかし、傍らの随行機には独り言が聞こえていたようだ。
「本事案の被害者である病際魔異教授が残したメッセージです。道中のブリーフィングで説明したはずですが。ブリーフィングデータを今一度読み上げますか?」
「いや、いい。サンプル採取を続けてくれ」
随行機は自分の作業――足跡、指紋、体液、その他遺留物の採取作業――に戻った。
随行機がかようにも殊勝なおかげで、こちらは”メッセージ”とやらに取り組むくらいしか作業が残っていない。
そのうち随行機だけに現場捜査を任せる日が来るかもしれないし、今回の捜査で随行機に大ヘマをやらせとくか。
そう出来もしない妄想に耽りつつ再度”メッセージ”に目を通す。
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