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驚いた。聞いた話では、上手くいった光海が特異であっただけで、知る限りでは飛び抜けて強い忍者である陽平の父、雅夫でさえも忍巨兵との契約は成らなかったとか。
それをこの兄妹は、まさか二人同時に成功させるなんて。
風雅の巫女姫、琥珀も、すべての忍巨兵が目覚めることを悠久の時をかけて待ち望んでいるという。これは間違いなく朗報だ。
「獣王クロスに森王コウガに続いて、二体も……」
「御前様が仰るには、時であったのだろうと」
つまり、動くべき時だったからこそ動いた。
それは決して、喜ばしいことばかりではないということに他ならない。
忍巨兵が必要な時。本当ならばそんな時が来てはならないはずだ。
それはおそらく、いや間違いなく先日対峙したあの忍邪兵を駆るオウロボロスを筆頭とした謎の襲撃者たちのことだろう。
早急に力をつけなければならない。
無意識に拳に力がこもる。
相手は陽平が強くなるまで待ってはくれない。ならば今は光海のように少しでも多くの協力者を集めなくてはならない時期なのだ。
そのためにも二人の話をきちんと聞く必要がある。
「それで。楓は上忍の命令であっても俺の下につくことが納得いかねェってことでいいのか?」
「……いえ、もう納得はしました。あくまで私なりに、ですが」
不服であることは隠さない。しかし先のやりとりで自分を納得させることはできたということらしい。
一応、陽平としても大変な目にあったことは無駄ではなかったということらしい。
「そっちはどうなンだよ。えっと……柊だったな」
一人我関せずといった風の少年に、強引に話を振る。
彼もまた忍巨兵の契約者であるなら無関係でいてもらっては困るからだ。
「オイラ? 納得はしてないよ。でもそれとこれとは別だって思ってるしね」
あっけらかんと言い放つ姿に思わず頭を抱える。
本当になにを考えているのだろうか。残念ながら柊の表情からは読み取れそうもない。
「それにさ。オイラはアンタのこと、結構気に入ってンだよ。あれだけ型破りな忍者なら、きっと……」
「きっと、なンだよ?」
一瞬、柊の笑顔の中に影を見たような気がした。
「ん〜、やっぱなんでもないや。とりあえずせんぱいはナシらしいから、アンタのことはアニキって呼ばせてもらうかンね」
「なんで俺がおめェのアニキなンだよ?」
「イージャン。オイラのアニキ分ってことでさ。かわいがってよ」
やはりよくわからないやつだ。これなら楓の方が幾分かわかりやすかった。それでもややこしい情緒の持ち主であることには変わらないわけだが。
「まぁ、いいけどな。とりあえず仮にでもお前らのお眼鏡にかなったようでよかったよ」
戦ってわかったが、この二人はまず間違いなく今の陽平よりも強い。
ただでさえ厄介な刺客が翡翠を狙っているかもしれないというのに、これ以上敵を作りたくはない。
もっとも、翡翠に被害が及ぶというのなら何が相手でも、どんな状況でも戦うつもりだが。
「センパイにもご納得いただけたようなので、さしあたってお知らせしておくことがあります」
「なんだよ、改まって」
「私たちの忍巨兵ですが、どういうわけか起動が不完全らしく未だ眠ったままの機能があるそうです」
わりと重大な欠点をなんでもないかのように告げる楓に、なんと言葉を返したものかと困っていると、柊が肩をトンと叩いて笑顔を向ける。
「心配しなくても戦えないわけじゃないし、オイラたちがいるからそこは大船に乗ったつもりでいてよ」
「おめェらがそう言うなら、信じるけどな」
とくに強さに関しては身に染みて理解したつもりだ。
一つ溜息をついて気持ちを落ち着けると、改めて二人に向き直る。
「経緯や二人の考えはともかく、協力してくれるってことでいいンだよな」
「そだね」
「はい。そう考えていただいて大丈夫ですセンパイ」
「じゃあ、これからよろしく頼む。柊、そして楓」
頷く二人にホッと胸を撫でおろし、陽平はようやく一心地つくことができそうだと苦笑いを浮かべた。
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